吉田桂一トリオ@GH9

吉田桂一は私にとって日本一のピアニストである。
初めて彼の音に接した時の衝撃と感激はいまだに鮮やか。
その力強い打鍵、濁りのない音色、波打つようなグルーブ感。
彼のピアノを無理にでも文章化しようとすると、
「透明度の高いロックアイス」とでも形容する他はない。
私を一発でKOしたファーストアルバムの
タイトル『Music Forever』は吉田が敬愛してやまぬ
ピアニスト、フレディ・レッドの曲から取られている。
このアルバムを私は何度繰り返し聴いたことだろう。
時に心を躍らせ、時に涙し、時に切なく思いにふけりつつ。

MUSIC FOREVER

MUSIC FOREVER


昨晩は彼が根城にしている御徒町のGH9でのトリオライブ。
この店は一見、猥雑な雑居ビル(個室ビデオ店などもある)に
あり、狭い狭いエレベーターに見知らぬ人と
二人きりになったりすると、何となく気まずい。
が、店のある9Fに到着すると、スタッフが
「いらっしゃいませ」と深々とお辞儀をしてお出迎え。
最初はビックリしたが、馴れると毎回お姫様気分。
客船内を模したインテリアも居心地よく、窓からの夜景も美しい。
スタッフ全員がブルーのシャツに身を固め、
キビキビ接客しているのも気持ちよい。
コレって、何となく懐かしい空気感。
そう言えば、80年代の高級ディスコを思わせるものがある。


この日は連休最終日というせいもあってか、
客数は少なめ。しかし、常連客のみでアットホームな
新年会を催しているかのような楽しさだった。
ベースは佐々木悌二。
ドラムスは村田憲一郎。
レギュラードラマーの渡辺文男が不在のため、
昨年10月に出たセカンドアルバムからの選曲は少なく、
ほぼスタンダードナンバーで固められたラインナップ。
それでも、このトリオの辞書に「手抜き」「ルーティン」の語は存在しない。
全く無駄な音も過剰な音もなく、音楽があるがままに
聴き手のフトコロ目がけてずずーんと入ってくる。
以前、どこかにも書いたが、
いきなり心の奥を素手でつかまれるような感じなのだ。
下記はセカンドアルバム『I'm Gonna Be Happy!』のジャケット。
このタイトルもファーストと同じくフレディ・レッドの曲から。
吉田の髪型がガラリと変わっていて同一人物とは信じられないのもまた一興。

I'm Gonna Be Happy!

I'm Gonna Be Happy!