さよならソウル・キッチン

長年通った近所の蕎麦屋
平成限りで閉店。
最終日の前日、
フツーに行ってきた。
ラストだから
天せいろor鍋焼きなど
ドドーン!系も考えたが、
フツーにキツネ蕎麦。
YES!共食い上等!
味も常連客オンリーの店内も
いっつも通り。
いっつも通り会計。
店主夫婦に挨拶をして店を出る。
通りに出て。
しばらく歩き、
泣いてることに気づく。


ごっくごく。
フツーの町の蕎麦屋
蕎麦は機械打ち、
んが。
ボリュームたっぷり。
ココのツユがどんなにか
己の味覚を形成してきたことか。
海外で真っ先に恋しくなった味。
退院してまっすぐ向かう店。
完全に舌の基本なのよ。


父が43歳で早世し、
働かざるを得なんだ
母の味なんて
ほっとんど記憶がない
不肖キツネにとって、
この店こそは
ソウル・キッチンだった。
洗い髪、
濡れたまんまで行けた店。
最終日も
いつも通り
2杯目のレモンサワーが
黙っていても
運ばれてきた。


もう。
明日っからは
この当たり前がない不思議。
店の建物はそこにあっても。
フツーが
フツーじゃなくなる。
どんなにか
フツーが貴重であることか。
体力をなくし、
トシを重ね、
病を得て、
なおも生きている今。
ありがとう。
そして。
新たな御代を生きよう。
一緒に。