因縁に時効なし

jazzydays2008-01-05

昨日、初詣に
出かけた神田明神
毎年ここへの参拝は
欠かしたことがない。
境内で年越しを
したこともあるし、
祭神・平将門公の首塚
(@大手町)で
新年を迎える時報
聞いたこともある。


さて。
誰にでも、
「我が生涯の一冊」と呼べる
書物が存在することだろう。
私にとって
その一冊(十冊)とは、
荒俣宏・畢生の大長編、
帝都物語』に他ならない。


映画?
ありゃダメよ。
駄作。
魔人・加藤保憲
演じた怪人俳優、
嶋田久作の途方もない
存在感を味わうことが
できるだけ。
原作を読んでないと、
何が何だか皆目わからんでしょ。


帝都物語 [DVD]

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今から20年近く前になるが。
私は神道を専門とする
宗教学者セミナーに
たびたび参加していた。
彼の実家が代々
(何百年間も!)
守り抜いてきた家訓は、
「正月三が日に酒を飲むな」。


彼自身は無類の酒好きだったが、
忠実にそれに従い、
毎年大晦日になると、
家中の酒類(みりんまで!)を
ドアの外に出すのを
習わしとしていた。
現に。
彼の父親が地元の新年会で
酒を口にしてしまい、
帰路に乗っていたバイクが
横転して命を
落としたそうである。


私は彼がしょっちゅう人前で
その話をするのを
心中ひそかに危ぶんでいた。
なぜなら。
彼をこころよく思わぬ輩が
正月三が日を狙って、
アルコールの類を
家に注ぎ込まないとも
限らんではないか。
ところが、である。
因縁の輪は
回る回るよ
どこまでも。

百年どころか、
千年のサイクルを超え。


話を大幅に省略しよう。
そう。
他ならぬこの私なのだ、
ある年の元旦未明。
彼の家に酒を流し込んだ張本人は。
何故そんな行為に及んだのか、
今もってワケがわからん。
当時の自分には、
ナニモノかが憑依していた、
としか言いようがない。


私は「その手」の感覚は
鈍いほうである。
なのに。
ある神社で理由もなく
イヤ〜な気配を感じて
後ほど調べてみると、
いにしえの時代、
おどろおどろしい調伏が
執り行われた経緯があったり。
また、ある神社では
祝詞を上げているうちに、
我が人生初の
トランス状態に陥ったり。


それはさておき、
肝心の結果であるが。
何事も起きなかった。
誰も命を落とすことなく、
大きな不運に
見舞われることもなく。
彼は私を許すのみならず、
こう言ってくれた。


「いつか、あなたのような人が
 現れるのではないかと
 思っていました。
 僕は毎朝、神棚に向かう時、
 日本の神々、世界の神々に
 手を合わせると同時に、
 あなたのことも祈っています。」


負けたな。
これは太刀打ちできんな。
敵ははるかに格上だな。
なあ、そうだろ?
がむしゃらに私を
突き動かしてた
名も知らぬ誰かさんよ。


話を『帝都物語』に戻そう。
千年の時空を超えた
我々の因縁劇(?)に
御興味おありの方は、
ぜひ御一読下され。
ヒントがそこかしこに
散りばめられている。
北一輝も石原完璽も
大川周明三島由紀夫
重要な役回り。
おっと。
忘れちゃいけねぇ。
あの永遠の不良、
偉大なる角川春樹もな。


画像はマイ書架より。
この版で解説を担当しているのが
件の宗教学者である。
十巻に及ぶ長い長い物語の
最終ページに至って、
初めてその名に遭遇した時の
私の驚きといったら。
とても言葉では表現しつくせない。