チャネリング・ガブリエル

jazzydays2013-11-09

我ながら、
ずいぶん長いこと
生きたもんだと思うわ。
富。
成功。
恋。
振り返ってみると、いろんなことがあったけど、
結局のところ、私はそのどれにも隷属しなかった。
いつだって「この身ひとつ」で生きてきた。
孤独?
そうねえ。
全く感じなかったと言えば嘘になる。
でもね。
籠の鳥が外に出たいと羽をバタつかせ、
のたうち回ったあげくに
肝心の羽がボロボロに擦り切れちゃうような
人生だけは送りたくなかったの。
勝手と言えば勝手。
自由と言えば自由。


恋も服も窮屈なものはゴメンだわ。
私が若かりし頃の女たちは、
コルセットでウエストをギュウギュウに締め上げて、
ついでに頭の中も旧態依然の世間体で締め上げて、
自分の意志で自分の人生を生きてなかった。
だから私はコルセットなしで着られる服が
欲しかったし、作ってみただけ。
そうしたら大当たりしちゃって、
のちのち「女性解放」とやらの大仰なホメ言葉を
頂戴することにつながった、ってワケ。


恋多き女
よくそう呼ばれたもんだけど、
私は決して浮気性じゃないし、
出会った男たちの一人一人を
誠実に等身大に愛したつもり。
孤児院出のしがないお針子だった私を
拾ってくれたエティエンヌ。
帽子作りの才能を見い出してくれたアーサー。
ロシア出身のディミトリーにイーゴリ。
この二人は同郷でも、まるでタイプが違ったわね。
だけど、二人とも本当にイイ男だった。
そして、イギリスのウエストミンスター公爵に
ドイツのシェレンベルク親衛隊少将...。


「男を踏み台にしてのし上がる女」、
「敵味方関係なく平気で寝る女」と、
世間は私をさんざん非難したわ。
でも、いちいち気にしてたら、やってられない。
目の前に愛する男がいて、
その男も自分を愛してくれる。
いったんドラマが始まってしまったら、
誰にも二人を止めるすべはないのよ。
私に罵声を浴びせる人たちは、
つまるところ私がうらやましいんでしょ。
くやしかったら、もっと自分の感情に
正直になるべきね。
人生たった1回こっきり。
愛し愛されるチャンスをみすみす捨てるなんて、
私には到底考えられないわ。


えっ?
そう言うお前は一体、誰なんだ?
これはこれは申し遅れました。
私の名前はガブリエル。
「ココ」という愛称のほうが通りがいいかもね。
ガブリエル・ココ・シャネル。
そうよ。
あのシャネル。
ビックリした?
うふふ。
私ね、もうお墓も用意してあるのよ。
墓碑は白。
クリーンで無垢なイメージがあるじゃない?
そこに獅子の彫刻。
これは私の生まれ星座「獅子座」のシンボル。
手回しいいでしょう?
ただし、いつあの中に入る日がやってくるのかは、
当人にもわかっておりません♪
こればっかりは「天の神様の言う通り」だわね。
さーて。
おしゃべりしすぎて、ちょっとノドが乾いたわ。
ねえ、よかったら、私のお気に入りカフェで
一緒にお茶でもしない?
大丈夫よ、心配しなくったって。
今日の支払いは私持ち!
さあ、行きましょう!