アストラル・トリップ

jazzydays2009-05-19

日比谷公会堂
熱く。
冷たく。
鋭く。
聴く者の
胸底を直撃する
ドライアイスの刃。
あの音色と共に
レオニード・コーガンが
そこにいた。
http://d.hatena.ne.jp/jazzydays/20060331
http://d.hatena.ne.jp/jazzydays/20060401


演奏を終え、
眉間の縦ジワを
ゆるめると
ステージから
こちらに向かって
ニッと笑ってみせた。


迎えに来たのだ私を。
それとも。
会いに来たのか私が。
あの世と
この世の
中間地点で
ようやく実現した逢瀬。
苦味走ったルックスに
笑顔は似合わないのに、
アフターアワーズ
ずっとニコニコ上機嫌で。



楽屋を出て
タクシーに乗る。
車種はわからないが、
懐かしい型だ。
レストランに到着。
四角く大きなテーブルには
純白のクロス。



向かい合って席に着く。
並ぶ献立は
古き佳き洋食の数々。
天井が高く、
広々とした店内。
礼儀正しい給仕たち。



「思えば
 いろいろな国を旅した。
 どれもが
 素晴らしい体験だった。」


遠くを見る目で
彼がつぶやく。
今回もまた。
「旅」の一つなんだね。


そう遠くない日。
じかにハグできる
場所へ行くよ。
今はまだ。
この世にハグすべき
あなたの同類が残ってる。
それがすめば
片道切符を握りしめて
機上の人になるから。



こわれる /ゼルダ・フィッツジェラルド(晶文社)