蜷川『コリオレイナス』

jazzydays2007-02-06

1月末日。
電車で延々
2時間かけて
はるばる与野本町まで出かけ、
蜷川幸雄演出、
シェイクスピア
コリオレイナス』を
彩の国さいたま芸術劇場にて鑑賞。


このシリーズには数年来、
欠かさず足を運んでいる。
神奈川県民なのに、
毎回確実に座席を確保するため
(蜷川演出作品は争奪戦が激しい)、
さいたま芸術劇場友の会メンバーにも
なっちゃってるもんね。


遠かろうと。
高かろうと。
何だろうと。

日本が世界に誇る国宝、
蜷川幸雄シェイクスピアだぜ。
見ずにいられるかよ。


毎度毎度、この人が演出する舞台に接した後は、
強烈なパンチを浴びせられた気分で、
足元はよろけ、口も聞けないほどグッタリ。
暴力的なまでに、
破壊的なまでに、
美しい。

幻惑的・蠱惑的でいて、
とてつもなく人間臭い。


今回の『コリオレイナス』は、
シェイクスピア作品中、
決してメジャーではない。
マイナー、と言い切っていいだろう。
しかし、内容は現代社会と
非常に相通ずるものがある。


主な配役は。
コリオレイナス唐沢寿明
その母ヴォラムニア、白石加代子
メニーニアス、吉田鋼太郎
オーフィディアス、勝村政信
シシニアス、瑳川哲朗
そして端役ながら、
蜷川組常連で、私の大好きな二反田雅澄。


まだ上演中につき、
未見の方にとっては、
少々ネタバレになるのを御勘弁をば。
まずは。
ホールに足を踏み入れると、
幕が全面、鏡張り。
我々観客もローマ市民の
一部に引きずり込もうという魂胆だろう。
群集劇を得意とする蜷川ならでは。


憤怒の形相の仏像、
幾重にも重なった襖絵、
そして般若心経。


ややもすると、
一見、西洋人好みの
安手なジャポニスム
堕しそうな舞台美術であるが、
蜷川は自らそれを戒めている。
今回、彼が目指したのは、
「汎アジア性」だそうな。


唐沢コリオレイナスは、
以前の蜷川『マクベス』でも感じたことだが、
小柄で線が細く、声量を欠く。
だが、興が乗ってくるにつれ、
堂々たる戦士の風格が立ち現れる。
いやあ。
いい役者だよ。
前に見たレイフ・ファインズの来日公演よりも、
ずっとずっと心にしみたよ。
はらはらと涙がこぼれたよ。


これまで、私にとっての
コリオレイナス像は、
「傲岸不遜なマザコン」程度の
印象しかなかったのだが、
今回の舞台を機に、
「妥協を許さぬ誇り高き戦士」として、
マイ・ヒーローの座に鎮座した。


この蜷川『コリオレイナス』、
4月にロンドン公演が予定されている。
シェイクスピアの本国を、
思いきり制圧してやれ。
目にモノ言わせてやれ。

英国の舞台関係者および観客諸君。
アンタらにゃ、
これほどのモノは創造できまい。
ざまぁ見さらせ!


さて。
舞台鑑賞後は、感動と興奮に浸りながら、
ゆるりと一杯やりたいところだが。
彩の国さいたま芸術劇場の周辺って、
ホントに。
なーんにもないのよねえ。
あるのは、ファミレス・チェーンの
華屋与○衛とサイ○リヤぐらい。
淋しすぎ。
観劇後の文化的環境にも配慮して下され、
埼玉県殿。