Whole Lotta Pins

手首を覆い隠す長さの
ロングTシャツ(by HYSTERIC GLAMOUR)、
胸元を飾るイラストは、
ロイ・リキテンシュタインを真似た
シルク・スクリーン・タッチ。
布地には、いくつもの安全ピン。
肌に貼りつくような黒のスリムジーンズ。
髪はデップでツンツンに立てた
刈り上げベリーショート。
口紅は、ほとんど黒に近いダーク・ダーク・ブラウン。


かつては、そんな格好が定番だった。
「胸いっぱいの愛を(Whole Lotta Love)」ならぬ、
「胸いっぱいのピン」を。
安全ピンで真新しい服を突き刺す行為は、
当時の精神状態に、この上なくマッチしていた。
LIVE会場では、お決まりの pogo dancing。
握りこぶしを上に突き上げ、
ぴょんぴょん飛び跳ねる。


あの日。
ラフィン・ノーズ日比谷野外音楽堂
たまたま最前列にいなかったおかげで、
私は今日、こうしてPCを前に文章を綴ることができる。
野音では、数々の"伝説"のLIVEに接した。
内田裕也スターリンアナーキー
ロッカーズ、ハウンドドッグ、モッズ。


モッズの名曲「激しい雨が」の元となった
野音LIVEにも居合わせた。
降りしきる雨の中、
聴衆はほとんど引き上げず、
頭を激しく振り、こぶしを天に向かって振り上げていた。
全身濡れネズミ。
それでも、不思議な爽快感があった。
ズブ濡れのまま電車で帰宅し、
翌日、高熱を出した。
おかげで、行くはずだった
マンハッタン・トランスファー
チケットを無駄にした。


石井聰亙監督作品『爆裂都市』はマイ自我形成の原点。
もはやすっかりカドがとれて、
フツーのオッサンになっちまった
陣内孝則が、こんなにヤバイ目をしてた頃があったんだよ。


爆裂都市 BURST CITY [DVD]

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サントラはロッカーズルースターズ
混合編成という豪華版。
これがまた、たまらなくヤバヤバ。



今や。
服装はギンギラ・ド派手な姐御系。
ジーンズには見向きもしなくなり、
スカート・オンリー。
アタマの中身も左から右へと大きく旋回したが、
カラダを流れる熱い血とスピリットだけは、
変わらぬつもりだ。
そう。
目には見えなくても、
私はいつも武装している。
無数の透明安全ピンで。