緑の眼

O, beware, my lord, of jealousy;
It is the green-ey'd monster which doth mock
The meat it feeds on.


「ああ、用心なさい、将軍、嫉妬というやつに。
こいつは緑色の目をした化け物だ、
餌食にする肉をもてあそぶ。」
シェイクスピア『オセロー』より松岡和子訳)


先日、その化け物を背負ってるヤツを見かけた。
愛する者のそばにいるのに、
ちっとも幸せそうじゃなかった。
絶えず「誰かに奪われはしまいか?」と
ビクビク・ハラハラおびえてるのが
ハタ目にもミエミエだよ。
そんなことじゃ、オマエの大切な誰かさんにも
早晩、愛想をつかされるだろうよ。
上記の台詞は以下のように続く。


「女房を寝取られても幸せに生きて行けるのは、
それが定めと思い決め、不倫した女房など愛さない男です。
しかし、ああ、惚れながら疑い、あやしみつつ
熱愛している男には一分一分が地獄の苦しみでしょうな!」


だよな。
ならば誰も愛さぬが勝ち。
でもさ。
誰も愛さないのも淋しい人生。
それじゃ。
緑色の目をした化け物と縁を切ることだ。
アタクシ自身、
幾度も幾度も数え切れないほど、
この化け物に憑依されてきましたよ。
疑心暗鬼のカタマリでしたわよ。ええ。
ところが。
数年前のある日。
フッと、ヤツの気配が消滅したのよ。
そしたら。
ものすごく楽になった。


楽になれよ。
化け物に食われてるそこの君。
今度は「食う」側に回ってやれよ。
人生、十倍も百倍も面白おかしくなるぜ。