ボーナス・トラック不要論

モダン・ジャズのいわゆる"名盤"の多くは
LP時代に世に送り出されている。
収録時間がせいぜい40分程度に限られていた時代。
当時のミュージシャンは、
曲順や収録曲の選択に、どれほど頭を悩ませたことだろう。
それがCD時代に入り、70分近くまで録音可能時間が延びた。
これは現代を生きるミュージシャンには、
至極当然のことであり、
アルバムのコンセプトも、
CDというメディアに合わせてアイデアを練るはずだ。


が。CDの出現を待たずに、
彼岸へ旅立ってしまった者たちは、
己が残したアルバムを後世の人間たちが、
勝手に変更・改竄していることを、
草葉の陰で、どう感じていることか。


ここに1枚のCDがある。
あまりと言えば、あまりに有名な
Bill Evansの『Waltz for Debby』。
曲順を羅列してみよう。


Waltz for Debby

Waltz for Debby


1. My Foolish Heart
2. Waltz for Debby [Take 2]
3. Waltz for Debby [Take 1]
4. Detour Ahead [Take 2]
5. Detour Ahead [Take 1]
6. My Romance [Take 1]
7. My Romance [Take 2]
8. Some Other Time
9. Milestones
10. Porgy (I Loves You, Porgy)


一体、何なんですか、これは!
と、声を大にして言いたい。

いかに収録時間が増えたとは言え、
余計なオマケは要らないんだよ!
「Take○」とか「bonus track」とか
「alternate take」とか
「not part of original LP」などと
但し書きされた曲ってのは、
早い話がボツ・テイクってことだろ!
ボツにはボツになるだけの
理由があんだよ。

出来の悪いモノをサンドイッチみたいに、
オリジナルの中に挟みこむんじゃねーよ。


中には上記のようなケースをさけるべく、
アルバムの最後にボーナス・トラックをまとめて
入れてる場合もあるが。
これまた、要らねーんだよ!
当時のミュージシャンが曲順を悩みに悩み、
最後はコレで締めくくろう!と決断した、
その意志=遺志を
踏みにじるんじゃねーよ。

作品としてのコンセプトが
台無しになると思わんのか。


たとえ70分録音可能であっても、
オリジナル・アルバムが40分で完成しているなら、
それは、そのまま尊重すべきである。
余った時間をオマケで埋めようっていう、
その根性がセコイんだよ。
頼んでもいないオマケなんぞを入れるかわりに、
値段を安くしたらどうかね。
どうしても、ボツ・テイクを聴いてみたいという
マニアに対しては「ボツ・テイク集」を
新たに編纂すりゃあいいだろうが。
(事実、この私も、その手のシロモノを持っていたりする。)


まあ。何はともあれ。
ジャズはLIVE、これにつきる。
あの世のミュージシャンに接するには、
音楽媒体を用いる他ないけどな。