パンクとセレブの共存

私が敬愛してやまぬ指揮者、故・クラウス・テンシュテット
旧・東ドイツ出身の彼がその才能を花開かせたのは
70〜80年代のロンドンにおいてだった。
21世紀の今日ですら、いまだ"階級差"が歴然と存在する
イギリスで、彼が指揮するクラシック・コンサートの客層は、
セレブからパンクまで、多岐にわたったという。


≪(テンシュテットが)ロイヤル・アルバート・ホールで
マーラーの<第六番>を演奏したとき、九十分もの間、
奇妙な髪のパンクの若者たちが、立見席で身じろぎもせず
聴きいっていた。≫
(ノーマン・レブレヒト著『巨匠神話』文芸春秋刊より抜粋)


巨匠神話

巨匠神話


このフトコロの深さはどうだろう。
いかに我が国でマーラー人気が高まっているとは言え、
はたしてサ○トリーホールや東京芸○劇場あたりで、
パンク・ロッカーやヘビメタ青年を
見かけることがあるだろうか???


私自身、「パンクからマーラーへ」、
「一曲が2分30秒から一楽章が23分の世界へ」と
越境したクチだが、その経緯については
かなり長くなるので、別の機会に存分に論じてみたい。


さて。今宵はベーシスト増原巖率いるクインテット
"What's Up?" をBody & Soul にて聴く。
パーソネルは。
ベース、増原巖。現時点で私にとって日本一の
ベーシスト兼コンポーザー。


トランペット、田中洋一。
大坂在住の彼はこのクインテットのLIVEのために、
毎月わざわざ上京してくる。
彼を通して、私はトランペットという楽器の魅力に
目覚めさせられた、と言っても過言ではない。
その迫力・感性・自由自在な歌いぶり。
どれを取っても第一級である。


テナーサックス、河村英樹。
彼については多くを語るまい。
とにかく「エロイ!」「この女殺し!」と
思わず殴り倒したくなるフェロモン系テナー。


ピアノ、堀秀彰。
繊細(そう)なルックスに似合わず、
思わず呆然・唖然とさせられる
辣腕プレイを繰り広げる天才肌。
飲ませると、ますます演奏のノリが良くなることでも有名。


ドラムス、安藤正則。
このクインテットでは一番新しいメンバーであるが、
LIVEの回数を重ねるごとに、どんどん、みるみる
凄味を増していく。
単なる"力技"系ではない。
類まれなテクニックに裏打ちされた
リズム感! スウィング感!
聴いていて、本当にため息がもれる。


今宵のお供はラガヴーリンをダブルのストレートで。
チェイサーはソーダ
この店は料理のクオリティも高い。
とろけるようなビーフシチュー、
筆舌に尽くしがたいうまさだったよ。
おかげ様でいい夢を見られそうだ。
ありがとうね、今宵のイイ男たち。