甘味の力

もうじきバレンタインデーとやらがやって来るそうで、
デパートやスーパーに足を踏み入れると、
多種多様なチョコがてんこ盛りに陳列されている。
が、しかし。
私の身近にいらっしゃる男性諸君。
私は君たち全員を平等に愛するがゆえに、
あえて誰にもチョコは贈りません。
あ、でも欧米風に私に花やプレゼントを
下さるのは大歓迎よん。


などとぬかしてみたところで、
「男に誕生日を忘れられる」才能の
持ち主のアタシだ、どうせ誰からも何も届きゃしないし、
初めっから、期待なんぞしちゃいない。
お祭り騒ぎは、それが何であれ反吐が出る。
神々へ向ける真の祭祀に対しては畏怖と敬意を感じるけれど。
だから、どんなに巧妙なたくらみであっても、
そこに商業的なニオイを嗅ぎつけてしまうと、もう乗れない。


チョコレート自体は大好きなのだが。
子供の頃、アレルギー体質で、
食べる量を制限されていたので、
菓子の中では特に思い入れが深い。
菓子類は、別になくても生きていくのに困るわけじゃない。
それなのに、存在するのは、
その甘味に特別な意味と力があるからだろう。
何の変哲もない、淡々とした日常の中に
メリハリをつける食べ物。
頭と心の栄養。リフレッシュメント。
イギリスで長距離列車に乗ると、
菓子や軽食や飲み物をカートに乗せた売り子が
「Any refreshments?」と声を上げながら、
車内を通り過ぎていくけれど、まさに言い得て妙。
また、強烈な甘味はトランスに似た状態をもたらすため、
世界各地で祭事用に用いられる菓子には、
多量の砂糖が含まれている。


たかが菓子、されど菓子。
一刻も早くバカ騒ぎの期間が終わって欲しい。
そして、静かな日常の節目でしみじみとチョコレートを味わいたい。