エロイカ・ダイアローグ

jazzydays2010-02-04

立春を迎えたとたん、
いきなり寒い。
それでも。
ちゃーんと梅が咲いてる。
律儀だぜ!


さて。
自ら禅を実践し、
心霊研究にも詳しい
作家・三浦清宏
若かりし頃、こんな体験をしている。
留学先アメリカの大学での
「英雄」トリップ!


≪私は毎日のように、
 ベートーベンの第三シンフォニーを、
 「英雄」という名前にひかれまして、
 聴いていたわけです。
 聴き始めるとすぐ眠くなるんです。
 これはいかん、
 何とか 起きていなければ
 ならないというので、
 一計を案じまして、ノートをとることにして、
 何でもいいからとにかく自分の印象を、
 記号でも何でもいいから
 書いていこうというわけで、
 キラキラしているところは
 星のような記号を書いたり、
 流れるようなのは川のような
 記号を書いたりしまして、
 音符などはわかりませんから、
 そうやって眠気を払いながら
 聴いていたわけです。
 それが一日たち、二日たち、
 何の変化も起こらない。≫



んもう。
三浦さんったら。
音楽は苦行じゃないんだからさあ。
クラシックって
もっとエロくて
えげつないもんだわよ。
エロイカ(英雄)ってぐらいだし。
と。
ツッコミたくなる一節である。
が!


≪ああ俺はやはり音楽というのは
 分からないんだなと思って、
 もうやめようと思いまして、
 ノートを放ったらかして
 ウトウトとしていたんです。
 そしたら、急に様子が変わって、
 音楽が自分の体の中に川のように流れ込んできた。
 これはどうにも止めようがないんです。
 音楽が流れ込んできて、
 自分を流すんです。
 その上に自分は浮かんで、
 音楽の鳴るのに従って、
 浮かんだり、沈んだりするんです。
 周りは真っ暗です。
 真っ暗闇の中にいろんな光が見えたり、
 光が見えたりと言ったらおかしいけれども、
 宇宙のような空間に何か
 キラキラするようなものが見えた。
 自分は、そこの流れから
 降りたいと思っても降りられない。
 そういった体験をいたしました。≫



うんうん、
来たんだわねアレが。
そうよそうなのよ!


≪そのときに、その音楽がすっかり
 分かったような気になったわけです。
 もちろん分かってないのでしょうけれども、
 とにかく気分的に、感情的に、
 すっかり分かったような気になった。≫



わかる・わからない
じゃないんだってば三浦さん。
素直に「飛ぶ」。
それだけでオッケー。
気持ちよかったでしょ〜?


≪これは誰にでもできることで、
 LSDをやらなければできないとか、
 超能力を持たないとできない
 ということではなくて、
 たいていの人なら
 達することのできることです。
 私のように、音楽のことが
 あまりわからない人間でも
 そういうことができた。≫


幽霊にさわられて―禅・心霊・文学

幽霊にさわられて―禅・心霊・文学


ここ十五年あまり、
私があちらこちらの
コンサートホールや
ジャズクラブや
ライブハウスで
浸ってきたのは
結局それだった。
ナマの音楽が持つ魔力に
淫していた、
アディクトだった、
と言い換えてもいい。


しかし。
ひょっとしたら。
一個の人間が
一生に聴ける音楽の
絶対量ってのは
決まってるんじゃなかろうか。
だとしたら。
フツーに比べて
明らかに「度を越した」量を
聴いてきた自覚のある我が身。
もはやその限界に
達してしまったのでは
ないだろうか。
今現在、
ナマ音も録音も
すすんで聴けずにいる状態(=小休止中)
ってのは。



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