リタリン・リンリン!

jazzydays2007-11-01

リンリン・ランラン
リタリン・リンリン!
はい。
最初のフレーズに
反応してしまったアナタは
世代がバレますね。



それはどうでもいいんだけどさ。
ついに。
向精神薬リタリン
鬱に対する処方が
ダメになるわねえ。
まあな。
しょーがねーよな。
アブナイ薬なのは確かだし。


私も数年前まで
リタリンを服用してたわよ。
このクスリの効果を如実に
描き出してくれてるのが
不世出の素晴らしき
クスリ&アルコール漬け作家、
故・中島らも


アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)


上記の著作より、
少々長くなるけれど、
リタリンに関する記述を以下に抜粋。
あの薬が持つ魅惑&呪縛から
逃れられる人が一人でも
増えるよう願いつつ。


リタリンは白い小さな粒だった。
 僕はそれを飲み始めた。
 飲み始めて三日目ぐらいに、
 異常にシャキーンとしている自分に気づいた。
 その高揚の仕方というのは、
 言葉にして言えば、
「君たち、何をしているんだ。
 一緒に地球を守ろうじゃないか」

 とでも叫び出してしまいそうな感じだ。


 僕は情なかった。
 人間の心というものは、
 こうも化学薬品の力ひとつで
 一変してしまうものなのか、と。


 とりあえず、リタリンのおかげで僕は重度の 
 うつ状態を乗り切ることができた。
 その後も僕はずっとリタリンを服用し続けた。
 医者に言われた二、三倍の量を
 毎回飲んでいたかもしれない。
 足りなくなった分は、友人にたのんで
 別の医者に処方を書いてもらった。


 リタリンは不思議な薬で、
 うつ気のある人にしか効かなかった。
 もともと元気な人には何の効果もない。
 が、落ち込んでいる人はなぜかとても元気になる。
 元気にはなるのだが、その高揚の裏、
 頭のどこかでセミがシンシンと
 鳴いているような感じがする。
 このリタリンを二週間ほど続けていた頃だろうか。
 僕には、奇妙な妄想が起こり始めた。
 妻が、僕の食事に毒をもっているような
 気がして仕方ないのである。
 何度も頭の中で打ち消した。
 そんなわけがあるものか。


 僕は、ある友人の医師に電話をしてみた。
 彼は電話口でこう答えた。
 「ふむ。リタリンってのは、
  いわばシャブみたいなもんだからね。」

 あわててものの本を調べてみた。
 たしかに、リタリンの成分は
 「メチルフェニデイト」で、
 アンフェタミンと化学構造は異なるけれど
 似たような作用を持つ、とある。


 僕はその日からリタリンの使用を中止した。
 妄想は日を追うにつれて去っていった。
 かわりにまた、どんよりした
 うつ状態が残った。
 それ以降、僕と「うつ」の闘いは、
 いまだにずっと続いている。≫


私はリタリンをやめた後も、
パキシルとの相性が合わず、
何度も何度も
幻聴に悩まされた。

多くは深夜or早朝。
隣家の2階から耳をつんざく音量で
サックス、ピアノ、ベース、ドラムスに
よるリハ演奏(それも超ド下手な)が
聴こえてくるのだ。
あまりにうるさいんで、
怒号を浴びせたろか!
と、雨戸をガラガラッと
開けてみると。
戸外はシーンとした静寂。
ヤバイ。
これはヤバイっすよ。
パキシルは確かに有能なクスリらしい。
だが。
この自分には合わん。


私は幸いなことに
薬物には依存していない。
しかし。
アルコール、
となると別だ。
かつて。
依存症を患い、
三十代の若さで逝った
ライターの知人を知っているので
他人事ではない。
生前、私の冗談めいた取材(?)に対し、
彼は笑顔でこう答えてくれたもんだ。


私「ねえねえ、ピンクの象さんとか
  キリンさんの幻覚が見えるってホント?」
彼「いやぁ、そういうファンタジー系は
  基本的に来ないのよ。」
私「じゃあ、どんなのが来るの?」
彼「オレの場合はね。
  近所から大音量で『矢切の渡し』が
  聴こえてきたわけ。
  でね。
  オレは歌詞を1番までしか
  知らないから、
  2番まで聴こえてきたら、
  絶対、警察に苦情を言おうと思ったのよ。
  で、案の定。
  2番どころか3番まで
  フルコーラスで聴こえた!」
私「ほおお。
  で、どうした?」
彼「もちろん交番に駆け込んだ。
  そしたら、オマワリさんいわく。
  君は○○さん家の息子さんだろ?
  大丈夫。安心して家にお帰り。
  と言われてガクゼン!だよ。」


そう。
彼がアルコール依存症
という事実は
近隣に広く知れ渡っていたのだ。
彼の名誉のために、
そして。
短期間ではあったが、
温かい交流に感謝し、
記しておくが。
彼の直接の死因は
アルコールではない。
生前から患っていた
心臓疾患のためである。


前述の中島らも
クスリのみならずアルコールにも
いちじるしく依存していた。
孤独な魂、
という他はない。

同類としては。


今夜、すベてのバーで (講談社文庫)

今夜、すベてのバーで (講談社文庫)


画像は恒例、食品サンプル・シリーズ。
「オリーブが見当たらなくて
 適当にチェリーを入れちゃった
 エセ・マティーニ」。