孤・個・狐

かつて。
毎年この日は必ず
赴く場所があった。
今でも。
足を運ぶべきであろう。
しかし。
いかんせん。
体力がない。
この日は。
必ず真っ青な空に
焼けつくような猛暑、
と決まっているのだ。
英霊たちよ。
虚弱なこの身を許したまわんことを。

一方。
かの三島由紀夫が
いみじくも代弁した
「などてすめろぎは人となりたまひし」
という痛恨の念も胸に迫る。

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

ふだん、めったにTVを見ない私が
昨晩は珍しくスイッチをONにした。
なぜなら。
東京裁判で唯一、
被告全員無罪を主張した
インドのパール判事の
ドキュメンタリーが
放映されたからである。
まあね。
所詮NHKだからね。
全くもって食い足りん。
が。
これまでパール判事を
知らずにいた人々にとっては、
よき啓蒙となったであろう。

パール博士の日本無罪論

上記の本にはパール判事、
最後の来日時の模様を伝える
新聞記事が掲載されている。
題して。
「講演会のパール博士
　無言のままで合掌
　聴衆感動、すすり泣き」

持病の胆石をおして来日した
パール氏は壇上に登場したものの、
一言も発することなく、
合掌し深い黙礼を
聴衆に送るのみ。
一人の中老の紳士が嗚咽を
あげたのをキッカケに、
会場内にすすり泣きの声が広がったという。

さて。
不肖・不良・不調・不逞の
これなるキツネ。
昨今のロケンロール！生活が
たたってか、さすがに
しっぽが痩せ細り、
本日は整体へ。
再び許したまへ！英霊たち。
いつもなら。
施術後は明るい気分になるのだが。
なぜか深い虚無感。
今日は飲まないつもりだったのに、
中華料理店で紹興酒に
燗をしてもらう。

街中はお盆休みを楽しむ者たちの群れ。
電車内でも街頭でも、
皆が皆、携帯を手に
誰かと連絡を取り合っている。
１日に何回も何回も何回も。
一体ナニをそんなに
伝えることがあるのだろう？
全く不可解。
あらためて。
今はなきツーカーの
「シンプルって、うつくしい」
「話せりゃええやん、電話やし」
という名キャッチコピーが脳裏に甦る。

より正確を期すならば。
己が浮世で孤立してるだけか。
確かに私は。
老若男女問わず、
初対面の人間には好感を
抱かれる確率が高い。
そのわりに。
持続性がないのは、
気性の激しさが災いしてんだろうな。

私のことを頭の隅で
気にかけてくれる人物が
存在していても。
目の前の生活に追われて、
私にエネルギーを
注いでくれる余力を持ち合わせないのだ。
まあ。
それはお互い様だけどな。

You're Only Lonely