蜷川『恋の骨折り損』

jazzydays2007-03-22

彩の国さいたま芸術劇場にて。
蜷川幸雄演出、
シェイクスピア作、
恋の骨折り損』観劇。
今年2回目の
ニナガワ・シェイクスピアである。
(前回の詳細は下記を↓)
http://d.hatena.ne.jp/jazzydays/20070206


出演者は全員男性。
『お気に召すまま』
『間違いの喜劇』に続く、
「オールメール・シリーズ」第三弾。


主なキャストは。
北村一輝(ナヴァール王)。
姜暢雄(きょう・のぶお、フランス王女)。
窪塚俊介(デュメイン)。
高橋洋(たかはし・よう、ビローン)。
内田滋(うちだ・しげ、ロザライン)。
月川悠貴(マライア)。
中村友也(キャサリン)。
須賀貴匡(すが・たかまさ、ロンガヴィル)。


恋の骨折り損』は1月の
コリオレイナス』と並び、
シェイクスピア作品中でも
マイナーな部類に入る。
だが、「若書き」ならではの
才気煥発さ、甘酸っぱさに
満ちた珠玉の作だ。
喜劇のはずなのに、
喜劇で終わらない。

ほろ苦く、せつない余韻が
長く長く残る。


以下、未見の方には
ネタバレになるが、
感想を記しておこう。
まず。
主演の北村一輝が出色だ。
彼に関しては、
ちょっと「アブナげ」で
「サイコ」な役者という印象が
強かったのだが、
どうしてどうして。
堂々たる貴族の風格が匂い立ち、
同時に健全な笑いもキチッと取れる。
これほどシェイクスピア作品に
しっくりなじむとは。
憂いを含んだルックスは、
ハムレット』の
タイトル・ロールや、
ジュリアス・シーザー』の
ブルータスにも向いていそう。


そして。
蜷川の舞台には欠かせない高橋洋
この人はコミカルな役柄、
ナイーブな役柄、
シリアスな役柄、
何をやらせても素晴らしく魅力的だ。
決して大柄ではないが、
張りのある筋肉に
支えられた体躯、

丹田から吐き出されるかのごとき豊かな声量、
敏捷な動作、
瞳の輝き。
どれもが「ため息」モノだね。


さらに。
今回が初舞台となる、
モス役・西村篤の
初々しさ、
可愛らしさ、
しなやかさ。
思わずヨダレが出そうだよ。
カーテン・コールの時、
2回も目が合っちゃった。うひ。
記念すべきメジャー・デビューが
蜷川演出作品とは、
キミの未来は明るいぞ。


端役でも忘れちゃならないのが、
蜷川の舞台で
道化役をやらせたら
右に出る者なし、

大石継太。
そのペーソス漂う存在感は、
「笑いを取る」役柄でありながら、
見ていて、ついつい涙が出ちゃうのよね。


さて。
毎度アッと驚くサプライズが
用意されている蜷川シェイクスピア
今回は....?
な、な、な、何と。
ラップ!の導入だっ。

皆の衆、見て驚け。
聞いて二度驚け。
この演出家は空恐ろしいおっさんだ。
齢70を超え、どこまで突っ走る気なんだ。おい。
アンタがその気なら、
こっちも、どこまでも突っ走るぜ。


≪YO! NO!
  YO! NO!
  与野本町!≫


与野本町(よのほんまち)=劇場の最寄り駅。
引っ越し公演先では、
それぞれの「ご当地」が
ラップに織り込まれるんでしょうなぁ。


今回の座席は通路際。
劇場内を縦横無尽に走り回る
役者たちがすぐ真横。
彼らの口から台詞と共に、
霧吹き状に噴出する
ツバの飛沫を
ありがた〜く浴びちゃったわ。
おほほほほほほ。