憂国の人

三島由紀夫、死して36年。
昨日が命日。
今年も彼を偲ぶ『憂国忌』が盛大に行われたことだろう。
かつては、会場の設営を手伝ったり、
受付をしたり、墓参りに出かけたり、
思えば、いろいろヘヴィな過去があったわね。
そんな私が、昨晩は三島のことなど忘れて、
ブルースに酔っ払ってたんだから、世話ねえや。
天国のミシマよ、ごめん。


彼の小説は通俗的なモノから崇高なモノまで、
幅広いが、その天才性に震撼させられるのは、
やはり最後の作品『豊饒の海』四部作。


豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)


豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)

豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)


豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)

豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)


豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)

豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)


これぞ、三島由紀夫畢生の大作であり、
戦後日本文学の金字塔。
長い長い長い筆運びの末に、
あんな結末を持ってくるとは。
人生を達観しきった人間にしか、なし得ない技であろう。


三島は戯曲の創作も得意とした。
何度読んでも、心酔させられるのは、
能のエッセンスを昭和の時代に置き換えた、
『近代能楽集』。


近代能楽集 (新潮文庫)

近代能楽集 (新潮文庫)


蜷川幸雄演出の舞台で、
ラストに市ヶ谷でのアジテーション
流れたのには驚き、鳥肌が立った。
舞台上方に三島の霊が存在し、
我々観客を見下ろしているような気がした。
恐るべし蜷川!
彼もまた、日本が世界に誇る不世出の天才である。


先日、書店で『文化防衛論』が平積みにされているのを見かけた。
ほんの十年前には、想像すらできなかったことだ。
著者が生きていたら、
現在の日本をどう見るだろうか。


文化防衛論 (ちくま文庫)

文化防衛論 (ちくま文庫)