梅田望夫、
齋藤孝、
同い年の男二人。
活躍の畑は異なれど、
見据えている未来と
闘うべき相手は同じ。
その熱い対談の記録が
形になった。
- 作者: 齋藤孝梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 新書
- 購入: 79人 クリック: 1,862回
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梅田氏の前著
『ウェブ時代5つの定理』は
単なる名言紹介集としか
感じられず、
いささか失望を覚えたものだ。
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 29人 クリック: 4,720回
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だが、この新刊は
文句ナシに手応え十分。
知的興奮と
刺激に満ち満ちている。
齋藤氏のナマ講演は
数年前に一度、聞いたことがある。
この人、通常の人間より
明らかに体温が高いな、
と思わせる
異常なハイテンションだった。
正直、暑苦しいキャラ。
文章の形で接してみても、
あのカン高く熱っぽい
「齋藤節」が
耳に甦って来る。
面白い男だよ。
実に。
まあ、笑えるセリフの数々は
本著を直接、読んでもらうとして。
以下、印象に残った
二人の言葉を抜粋しつつ、
感想を述べてみたい。
*************************
梅田≪誰が書いたかわからない匿名の掲示板は
ちょっと違うんだけれど、
ブログや個人のホームページには、
その人の「気」が乗っているし、
(中略)
たとえば、ある人のブログを一年間
さかのぼって読んでいくと、
初対面のときに、その人のことを
かなりよく知っているということがおこる。
(中略)
会った瞬間にデジャヴ(既視感)を
感じるんですよ。
「初めて会う気がしませんね」と。≫
これは私も非常に
しばしば感じることだ。
名もない個人にとって、
ウェブ時代における
恩恵の最たるものではないか。
梅田≪蒸気機関や自動車が人間の筋肉の
能力を増強したように、
ネットが脳とか人間関係を増幅する。
距離と時間と無限性の概念を
ゆるがしているわけです。
リアルの限定されたコミュニティだけに
とらわれず、未知との遭遇のありようが
がらりと変わってくると、
いろいろな可能性が出てきます。≫
すでに。
かなり出てきてるよな。
可能性の数々。
ほんの十数年前にはまず
出会うことが不可能だったであろう
人々と親しくコミュニケーションできる。
このことだけでも、
「孤独なキツネ」にとって、
どれほどの「福音」であったことか。
齋藤≪ここまで社会がスピードアップしてしまうと、
「好きじゃないともたない」。
(中略)
ある意味で厳しくなったというか、
がまんすればそれで済むという感覚を
超えてきたといえますね。
そういう厳しい状況になってきたときに、
僕は「心の自己浄化装置」が
必要になってくると思います。≫
全く同感。
ただ。
今の自分にそれがあるか?
否・否・否。
濁った緑色の沼。
底の見えないドブ川。
「好き」なものはハッキリ見えている。
しかし。
浄化に手間取りすぎている。
梅田≪本を読むときに、
「頭で読む人」と「心で読む人」が
いると思っています。
(中略)
「生きるために
水を飲むような読書」とか、
そういうような言い方をしているんだけれど。
(中略)
「知」というものを頭の中に
入れ込んで記憶して、
それを人に伝えるとかひけらかすとか、
どっちが物知りか比べるみたいなことだと、
グーグルにどうせ負けてしまう。
ある程度の基礎力は必要だけれど、
(中略)
自分の生きる糧として知を使ってほしいです。≫
これは結構、
実践できていると自覚する。
本は音楽と同時に
私の大事なエサである。
一文字も活字を読まずに
一日を終えることはまずない。
ここ数日は。
「その手」の方面が
好きな人々には
きっと「昔懐かし」、
レイライン関連の本ばかり
読みまくっている。
齋藤≪僕は本を読んでいても雑誌を読んでいても、
「なぜ今ここにこの言葉があるんだろう」と
思うことが多いんですよね。
「自分のために
書かれたような言葉」
だというふうに思う。
幸運な偶然、偶然の出会いです。
「セレンディピティ」感覚ですね。
(中略)
これだけ情報があふれていて、
読むべき本も出つくしている感じがあるなかで、
「これは運命の言葉だ」
のように思える人だけが、
情報ではない、心の糧になる言葉を
もてる人だと思うんですよね。≫
そうそう!
そうなんだよ。
自分のために
書かれてるんだよ。
調べモノをしてる時に
ひょっこり出くわすんだよ。
たまたま開いた新聞の記事や
本のページに
今まさに探し求めていた情報が
載ってたり、ね。
齋藤≪深海魚と出会えるくらいに
深くもぐらなくては、
物事は身につかないという
考え方なのです。
他の人を見ていて、
もぐるまでの期間の手前で
浮かびあがっているな
と思うことがあります。≫
うんうん。
でもね。
深海魚と出会った後に
潜水病になることもあるんだぜ。
不肖アタクシ。
現時点でそうかもしれませぬ。
そんなワケで。
最も深くうなずけた箇所が
以下の二つ。
梅田≪自分が「与えられているもの」と
自分が「与えているもの」の
天秤が傾いたとき
(「与えているもの」のほうが重くなったとき)
に辞める、というのが僕のロジックなんです。≫
(注:一部引用者によりアレンジ)
梅田≪いつもシャワーのように浴びる言葉が
励ましに満ちているのか、
そうでないのかということは、
私たち一人ひとりの精神に
ずいぶん大きな違いを
もたらすということです。≫
この本をもって。
梅田氏は執筆業から一時退き、
サバティカルに入る。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20080507
お疲れ様。
あなたがこれまでに
出してきた本の数々は、
ぼんやりとしか見えていなかった
ウェブの志向性を
クッキリと私の前に
立ち上がらせてくれた。
ところで梅田さん。
このどうしようもなく
ダメで使えない会社、
「はてな」の社外取締役は
まだ続行するの?
それがあなたにとって
喜ばしいワクワク感を
与えるなら、
どうか続けて下さい。
ただし。
くれぐれも無理なくね。
画像は川崎市内にて。
梅の後には。
桃、桜。
つつじ。
そしてまもなく。
紫陽花だよねえ。