蜷川『オセロー』@彩の国

jazzydays2007-10-13

記憶が薄れないうちに
観劇の印象をば。
10/11(木)。
蜷川幸雄演出、
シェイクスピア作、
『オセロー』
@彩の国さいたま芸術劇場
片道2時間、
往復4時間。
遠いんです!
しかも。
今回は芝居自体が
前半2時間、
後半2時間。
長いんです!


座席は1F1列の右から2番目。
前方なのはありがたいが、
舞台が見づらい。
小声のセリフが聞こえない。
(これは別の席の観客も
 同感だったので、
 音響に問題アリか?)
終了直後の感想は。
感動!
というより。
疲れた!
が正直なトコロ。


主な配役は。
オセロー、吉田鋼太郎
アゴー、高橋洋(たかはし・よう)
デズデモーナ、蒼井優
エミリア馬渕英俚可
キャシオー、山口馬木也


台本は数多いシェイクスピア翻訳の
中でも私が最も好きな
松岡和子バージョン。


オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)

オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)


彼女が訳書および
今回のパンフレットでも
述べている通り、
デズデモーナはうら若い乙女、
という解釈が
フルに生かされた舞台だった。
いうなれば。
美女と野獣
ならぬ
少女と野獣。


今や。
日本を代表するシェイクスピア俳優、
吉田鋼太郎演じるオセローは
スキンヘッドの後頭部に
梵字の刺青。
どこかユル・ブリンナー
彷彿とさせる。
かつては。
「子供のためのシェイクスピア」シリーズや
彼率いる劇団AUN(あうん)公演などで
楽屋を訪ねたりしたもんだが。
もはや。
手の届かない人になっちまったわ。


それはさておき。
吉田オセローの堂々たる風格、
声量、凄味、存在感!

意外にも。
彼がオセローを演じるのは
今回が初という。
以前はイアゴー役で
それはそれは
魅力的な「ヒール」っぷりを
示してくれたっけよ。


蜷川シェイクスピアではおなじみ、
高橋洋演じるイアゴーは
熱さと冷たさが同居する
このキャラの二面性を
緩急のタイミングが
絶妙なセリフ回しで
見事に表現。
ただ、邪悪さにおいては
同じ松岡訳でイアゴーを
演じたことがある
植本潤に軍配を上げたい。


この『オセロー』という作品、
悲劇ゆえに泣かせドコロは
何ヶ所もあるのだが、
今回、一番涙をそそられたのが
デズデモーナとエミリア
抱き合いながら
「女って損!」
と嘆くシーン。
以下、第四幕第三場より
エミリアの名セリフを抜粋。


≪妻が過ちを犯すのは、夫のせいだと思います。
 たとえば、夫が自分の務めを怠って、
 妻のものである宝を
 よその女の膝にそそぎ込んだり、
 急に嫉妬に狂って私たちを
 束縛したり、なぐったり、
 つむじを曲げて前より
 かまってくれなくなったりすれば、
 私たちだって
 腹の虫がおさまらない。
 いくら女が優しくたって
 仕返しくらいします。
  
 亭主どもに思い知らせてやらなきゃ、
 女房だって感じ方は同じだって。
 女だって目もあれば鼻もある、
 甘い辛いを区別する舌もある、
 亭主どもと変わりゃしません。


 どういうつもりなんでしょう、
 亭主が女房からほかの女に乗り換えるのは?
 遊びかしら?
 きっとそうね。
 燃えてくるから?
 それもあるでしょう。
 過ちを犯すのはふらっとよろめくから?
 それもそう。
 じゃあ、私たちは燃えないんですか?
 遊びたい気持ちは?
 男みたいによろめかないとでも?
 だったら私たちを大事にさせるか、
 思い知らせてやらなきゃ、
 女が悪いことをするのは、
 男の悪さを見習ったからなんだって。≫


コレってさ。
400年前に書かれたセリフだよ!?
日本じゃ戦国時代。
信長・秀吉の時代だよ!
いつの世にも。
男と女の間には
深い深〜い溝があるのね。
合掌。